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2005-05-22

アナログ派

_023CD屋などという因果な商売をやっている私がここでこのようなことを申し上げるとカドが立つでしょうが、敢えて私は「アナログ派で~す」と、ここで宣言しておきましょう。

アナログ意識するようになった最初の頃(95年~96年頃)の「アナログ好き」のイメージは、渋谷系orB系のオシャレな若い人達か、いかにも立派なオーディオ持ってそうな紳士の方々。で、オシャレでも紳士でもない、ただの小汚い若造だった私は「アナログぅ?別にCDでいいじゃん。CDでもアナログでも、聴けりゃいいべ?」と、彼らに対して、そして彼らの大事な「表現アイテム」(だったんでしょう、多分)であるところの「アナログ盤」というものに、明らかな劣等感と、それに付属した対抗意識をメラメラと燃やしておりまして、気分的には「アンチアナログ」セクトに属しておったわけです。

そんな私が急にアナログに開眼したのは、先日紹介しました「ブルース・レコード・ガイドブック」です。ページを開くと夢のような空間。「ああ、コレ絶対アナログで欲しい」というような、想像力をくすぐる素敵なジャケットの数々・・・。私が当時働いていたお店に入荷してくるアナログ盤を即行で「従業員取り置き箱」に備蓄し始め、少ない給料を工面して一万ちょいの安物ターンテーブルを買いに走ったのは、本を手にして程なくのことでした。

そのターンテーブルで最初に聴いたのは、忘れもしないハウリン・ウルフの名盤「モーニン・イン・ザ・ムーンライト」でした。盤だけを持っていた頃にカセットに録音してもらい、お店に入ってきた中古CDを店内で何度もプレイして聴いていたので、内容は分かってる、そして音の質感もどんなもんだか(まあ、強烈だわね)分かっておるつもりでしたが、針を落とした瞬間・・・「!!何じゃコリャ!!!!」でした。ウルフの地響きのような唸り声、「メンフィス・アグレッシヴ・サウンド」と呼ばれていて、シカゴでも恐れられていたという凶悪極まりない暴力的なサウンド。ここまでは分かる。それが凄いことまでは分かる。いや、分かっていたつもりでしたが、この、針が盤を擦って起こす音の、「音が一箇所に集まって、ぶわぁ~んと迫ってくる感じ」は一体何なんだと、正気を失いかけました。

CDというのは、音を製造する過程で、余分なものをどんどん削いでいって、純粋に演奏部分の音そのものを、極めてピュアな形で再生する技術の結晶であります。つまり「楽器や声の音以外の余分なものはノイズとしてやっつけてしまう」のがCDの音色を作る際の基本理念であります。反対にアナログは、ノイズや空気振動、マスターテープに音が入る段階で生じる”歪み”もそのまんま入ってしまいます(これは技術的にアナログの限界だそうです)。そうやって出来上がったドブロクみたいな音を精製する過程で、腕のいい職人さん(エンジニア)が、ノイズとかそういったものを処理する代わりに、「コレを含めてどうやって躍動感や明瞭さを出すか」という作業に精を出して音を「作ってた」わけです。もちろんCDのマスターをする職人さんは現在も活躍していて、中には極力アナログ盤、もっと行ってマスターテープの音質にかなり近い音を再現できるようなスゴ腕の方もいらっしゃるわけですが、それでもやはりレコードとCD、アナログとデジタルの違いは決定的なわけです。

ちょっと前に、ある方の厚意で、とあるパイロットの方の遺品として、大量のジャズのレコードを戴きました。そのちょっと前に、別の方の厚意で、上の写真の(見る人が見ればお分かりですね)ような、貴重なレコードを少しばかり戴きました。CDで所持しているものもあって、聴き比べてみたのですが、やはり音が全然違います。不思議なことに「綺麗」で「鮮明」なのはCDの方なんですがね。聴いた後に「聴いた~」という充実感を感じるのはアナログの方なんですよね。

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